Symposium
令和4年度レジリエント社会・地域共創シンポジウム「海溝型地震の被害想定と減災」を開催
開会挨拶をする寳金清博総長
趣旨説明中の山田孝センター長
基調講演中の蝦名大也釧路市長
【開催報告】
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の発生が懸念されるなか、内閣府の有識者検討会は2021年12月にその津波浸水想定を発表し、本年7月には北海道による被害想定が公表されました。広域複合災害研究センター(Center for Natural Hazards Research、 略してCNHR)は、読売新聞北海道支社、一般社団法人国立大学協会と共催で令和4年度レジリエント社会・地域共創シンポジウム「海溝型地震の被害想定と減災」を11月2日(水)に釧路市のコーチャンフォー釧路文化ホールで開催しました。本シンポジウムでは、地震発生メカニズムや津波浸水・被害想定の考え方、積雪寒冷地における避難行動や避難所運営に関する知見を発信し、連鎖複合災害や効果的な減災対策について議論しました。今回のシンポジウムは新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえYouTubeによる同時配信も併用したハイブリッド形式で開催しました。当日は、国や道、市町村の防災担当者、民間コンサルタントの技術者、地域住民の方などが現地参加し、YouTubeによるオンライン視聴者と合わせ233人が視聴しました。
シンポジウムでは、北海道大学の寶金清博総長からのビデオ開会挨拶があり、その後、鈴木直道北海道知事からの式辞(吉川政英北海道危機対策局長代読)披露、衆議院議員鈴木貴子氏並びに北海道議会議員小畑保則氏及び笠井龍司氏からの祝電が紹介されました。続いて、CNHRの山田孝センター長からシンポジウムの開催主旨説明がありました。基調講演は2件あり、1件目は、蝦名大也釧路市長から「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に伴う最大クラスの津波への対応について」と題し釧路市の取組についての解説と共に、対策遂行に当たり同市が抱えている課題と国・道に対する要望が示されました。2件目は、岡田成幸北海道大学名誉教授(北海道防災会議地震専門委員会委員長)から「被害想定の概要と課題~社会が議論すべきこと~」と題し被害想定の目的と手法の説明に加え、被害想定活用には短期的視点(想定結果による現行チェック)・中期的視点(逃げるための対策)・長期的視点(まちづくりによる逃げない対策)の重要性が教示されました。
続いて行ったパネルディスカッションでは、まず、登壇者8人による話題提供がなされました。谷岡勇市郎教授(北海道大学)は「津波発生確率」の難しさ、橋本雄一教授(北海道大学)はGIS活用事例としての「災害の現地化」による津波避難学習効果、山口真司特任教授(北海道大学)は「複合災害」回避のための土砂災害対策の考え方、根本昌宏教授(日本赤十字北海道看護大学)は「Preventable Death(避けられた死)」を回避する低体温症対策の重要性、草苅敏夫釧路高専名誉教授は冬季の避難の難しさ克服のために疑似体験(DIG)と人材育成(HUG)の活用を訴え、田村桂一調整官(北海道開発局)は開発局の取組と保有する対策用資機材を紹介し市町村の活用を呼びかけ、大西章文課長(北海道危機対策課)は被害想定に対する今後の道の取組と防災教育情報発信サイトの紹介を、伊藤剛次長(読売新聞北海道支社)は科学情報とは別に報道を通して伝えることができる災害情報は、災害時の人の動きや考えを伝え続けていく姿勢が重要であること等を、それぞれの専門的立場からお話いただきました。
その後、岡田氏をコーディネータとして各パネラーへの個別事例Q&A形式で議論が深められました。その中で、フロアからの質問や蝦名市長からの要望(対策予算措置の法規立て付けの柔軟活用)の可能性についても議論がなされました。最後に、コーディネータよりソフト対策を活かすためにはその前提としてのハード対策が重要であること、対策は次の世代への遺産であり長期的対策の視点も忘れてはならないこと、対策は他人事にせず産官学に報道・住民を加えたオールジャパンで取り組むべきことと総括されました。最後に、読売新聞北海道支社の平尾武史支社長より閉会の挨拶があり、シンポジウムは盛会裡に終了しました。
CNHRでは、防災に係るシンポジウムを年1回開催しており、今後も複雑化、多様化する自然災害に焦点を当て、行政や一般住民を対象としたシンポジウムを開催し、継続的にアウトリーチ活動を行っていきます。なお、本学と読売新聞北海道支社は、2021年3月に、相互に連携した社会貢献活動を推進するための包括連携協定を締結しており、今回の防災シンポジウムはこの連携協定の一環として共催で開催しました。